退職金の一部を、個人年金保険で運用しようか迷っている。

そんな相談を、知り合いの早期退職者から受けたことがあります。
約1,000万円を個人年金保険にまとめて入れる。一見、堅実な選択に見えます。ただ、実際に中身を計算してみると、印象はかなり変わりました。
この記事では、IRR(複利ベースの実質利回り)という計算方法を使って、個人年金保険が本当に「得」なのかを検証します。保険会社の説明を鵜呑みにする前に、自分で判断できる材料を持っておきましょう。
結論:実質利回りは年1.05%。リスクに見合うかは人による



先に結論からお伝えします。
今回検証した個人年金保険(60歳で1,000万円納付→65〜79歳の15年間で受け取り→受取総額約1,140万円)を、IRR関数で計算すると、**実質利回りはわずか年1.05%**でした。
「約140万円増える」と聞くと魅力的に感じますが、20年近くお金を固定した上での増加率としては、正直物足りない数字です。
なぜこの数字になるのか?7つのリスクを洗い出す
保険会社が見せてくる「返戻率〇%」という数字は、実は年利換算されていないことがほとんどです。単純に「払った額」と「受け取る額」を比べているだけなので、時間の価値(複利効果)が考慮されていません。
これは、10年間かけて100万円を110万円にする商品と、1年で100万円を110万円にする商品を、同じ「10%お得」として並べているようなものです。当然、後者の方が圧倒的に効率が良いはずですよね。



だからこそ、まず「リスク」を先に洗い出しておく必要があります。
| リスク項目 | 有無 | 内容 |
|---|---|---|
| 元本割れリスク | なし(満期まで解約しなければ) | 途中解約すると手数料込みで元本割れの可能性あり |
| 為替リスク | なし | 円建てのため。外貨建ての場合は要注意 |
| 税務リスク | なし | 本人が受け取る場合は雑所得として課税されるのみ |
| 金利リスク | あり | 契約時の低金利で20年近く固定される |
| 流動性リスク | あり | まとまった資金が必要な時に引き出せない |
| インフレリスク | あり | 物価上昇率2%を下回る利回りだと実質目減り |
| 長生きリスク | あり | 受取期間が決まっているため、長生きに対応していない |



7つのうち4つに「あり」がついています。これが、表面上の「140万円増える」という魅力の裏側にあるコストです。
実質利回りの計算方法(自分でもできます)
「IRR関数」という言葉に身構える必要はありません。エクセルやスプレッドシートに、支払った金額と受け取った金額を年ごとに並べるだけで、自動的に実質利回りを計算してくれます。
今回のケースで言えば、
- 60歳:-1,000万円(支払い)
- 65歳〜79歳:毎年約62万円ずつ受け取り(6年目以降は年5%ずつ増加)
これを一覧にしてIRR関数にかけると、**年1.05%**という数字が出てきます。
個人年金保険に限らず、学資保険や貯蓄型終身保険など「増えます」とアピールしてくる金融商品を検討するときは、この計算を一度やってみることをおすすめします。「返戻率〇%」という言葉に惑わされず、自分の目で確かめる習慣が、遠回りに見えて一番の防御策になります。
この記事の結論:私なら見送ります



リスクを引き受けてまで得られるのが、年1.05%という利回りだとすると、正直「割に合わない」というのが私の実感です。世の中には、同じくらいのリスクでもっと高いリターンが期待できる選択肢が他にもあります。
もちろん、「元本保証に近い安心感」を最優先するなら、この商品にも一定の価値はあります。最終的にリスクを引き受けるのは、保険会社ではなく自分自身です。だからこそ、「なんとなく良さそう」で決めず、数字で確認してから判断する。それだけで、金融機関にとって都合の良いカモになるリスクをかなり減らせます。
個人年金保険以外にどんな選択肢があるのか気になる方は、退職金の運用方法を幅広く整理したこちらの記事も参考にしてみてください。


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